女性労働に関する 専門家判例コラム
第17回 同僚ら集団のいじめによる精神疾患
君嶋 護男
職場におけるハラスメントは、通常、上位の者が下位の者に対して行うものですが、下位の立場にある者が、上位の立場にある者に集団でいじめを行い、精神疾患に追い込んだ事例もあります(大阪地裁平成22年6月23日判決)。
この事件は、6級職に昇格した女性社員A(原告)が、4級職と同様の補助作業を行っていたところ、下位の地位にある女性社員から、Aについて、①顧客情報が入れ替えられていたと言われ、②6級職に相応しい仕事をしないで高い給料をもらっている等と妬まれ、③同僚にパソコンの操作を教えてケーキをもらったところ「ケーキに釣られて仕事をする女」と陰口を聞かれ、④ミスをした際、お互いに目配せをして冷笑され、⑤席が近くなったボス的存在の女性から「これから本格的にいじめてやる」と脅され、⑥「幸薄い顔」と言われるなどの嫌がらせを受けました。上司は、Aからの相談を受けて、上記いじめを認識していたものの具体的な対応には至りませんでした。

Aは休職して「不安障害、うつ状態」との診断を受け、精神障害の発症は、同僚らによるいじめと、会社が適切な対応をとらなかったことによるものであるとして、労災保険法に基づき、労働基準監督署長に対し療養補償給付を請求したところ、これが不支給とされたため、その取消しを求めて提訴しました。
判決では、Aに対する同僚女性らによるいじめは集団でなされたものであって、かなり長期間継続し、その態様も甚だ陰湿であることからすると、陰湿さ、執拗さの程度において常軌を逸した悪質なもので、Aが受けた心理的負荷の程度は強度と言わざるを得ないとの基本認識を示し、その上で、上司らはこれに気付いても何らの対応を採ったわけでもないことから、Aは失望感を深めたことが窺われるとの判断を示しました。
こうしたことを踏まえて、判決では、原告に発症した「不安障害、抑うつ状態」は、同僚女性社員によるいじめとともに、会社がそれらに対して何らの措置も採らなかったことから発症したものとして業務との相当因果関係を認め、本件処分を取り消しました。
判例データベース
「参考判例」
京都下労基署長(女性社員集団いじめ)精神障害事件(パワハラ)
