判例データベース
派遣会社登録型派遣労働者雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 派遣会社登録型派遣労働者雇止事件
- 事件番号
- 大阪地裁 - 平成21年(ワ)第5474号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2010年06月11日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被告は、労働者派遣法に基づき一般労働者派遣事業を行う会社であり、原告は、被告との間で、平成15年9月29日、被告と本件派遣先との派遣契約(本件派遣契約)に基づいて派遣される条件で雇用契約(本件雇用契約)を締結し、雇用期間は当初2ヶ月、平成18年12月からは1ヶ月として44回更新されていた。
被告は、原告との雇用契約を更新する都度、労働条件明示書兼雇入通知書を交付していたが、平成20年10月17日、原告に対し、同年12月以降本件雇用契約を更新しない旨通知し、同年11月14日、原告には業務の習熟、品質改善の見込みが見られないため、契約更新を行わない旨記載した終了通知書を交付し、同年11月30日をもって原告を雇止めした。
これに対し原告は、本件雇用契約の期間は5年2ヶ月、更新回数は44回にのぼり、本件雇用契約はあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたか、少なくとも雇用継続を期待することに合理性が認められるから、本件雇止めは解雇に当たるところ、解雇の合理性は認められないとして、被告の派遣労働者としての地位の確認を求めた。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 解雇の有無
原告は、被告が昭和20年11月14日に原告を解雇した旨主張するが、被告は原告に対し、同年10月17日に雇止めの通知を行い、同年11月14日にこれを確認する内容の書面を交付したにすぎないのであって、これをもって解雇の意思表示があったとみなすことはできない。
2 本件雇用契約の性質
(1)被告大阪支店は、本件期間中、登録型の労働者を派遣対象とする一般労働者派遣事業の許可を受けていたこと、(2)原告は平成15年9月頃、被告大阪支店に対し、本件派遣先において就労することを希望し、登録に必要な手続きを行ったこと、(3)その後、被告は原告を本件派遣先に派遣する労働者として採用することを決定し、同年9月29日に雇用契約を締結し、就労条件明示署兼派遣労働者雇入通知書を交付したこと、(4)本件派遣契約と本件雇用契約は、常に同一時期に更新されるとともに、同一の派遣期間を定められていたこと、(5)被告は原告に対し、本件雇用契約を更新する都度、就労条件明示書兼雇入通知書を交付したが、原告がこれに異議をとどめることはなかったこと、(6)就労条件明示書兼雇入通知書には、雇用契約更新の判断基準の一つとして、労働者派遣契約の更新の有無が明示されていることが認められる。そうすると、本件雇用契約は、登録型雇用契約であることが明らかであり、本件雇用契約は反復更新を重ねたものであるが、この事実のみをもって、登録型雇用契約から常用型雇用契約に転化したということはできない。
3 本件雇用契約の終了
有期雇用契約は、期間の満了によって当然に終了するのが原則であるが、(1)期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといえる場合や、(2)期間満了後も使用者が雇用を継続すべきものと期待することに合理性が認められる場合には、その更新拒絶については解雇の法理が類推され、契約を更新しないことについて、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、期間満了後における原告と被告との法律関係は、従前の雇用契約が更新されたのと同様の法律関係になるものと解される。
本件雇用解約は約5年2ヶ月の間に44回にわたり更新されていたものであるが、被告は本件雇用契約を更新する都度、原告に対し、予め契約更新の意思があること及び更新される契約の内容に異議のないことを確認した上、その契約内容を明記した就労条件明示書兼雇入通知書を交付していたことが認められるから、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものということはできない。更に、本件派遣先は、平成20年10月初旬頃、被告に対し、本件派遣契約の更新を行わない旨を通知し、もって本件派遣契約は同年11月30日に終了したことが認められる。そして本件雇用契約は、労働者派遣契約の存在を前提とする登録型雇用契約であるから、本件派遣契約が期間満了により終了した以上、もはや雇用継続に対する合理的期待を認める余地はない。
これに対し原告は、本件期間中、社会保険及び雇用保険に加入していた事実をもって、常用的な雇用関係があり、雇用契約の継続に対する合理的期待を有していた旨主張する。しかしながら、有期雇用契約への社会保険及び雇用保険の適用の有無は、各保険制度の趣旨、法定の要件から決められるべきものであって、必ずしも個々の有期雇用契約の継続に対する合理的期待の有無と一致するものではないから、原告の上記主張は、上記認定を左右するものとはならない。
以上によれば、本件雇用契約は、その更新拒絶について解雇に関する法理を類推すべき前提を欠いているから、平成20年11月30日に期間満了により終了したというべきである。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例1008号89頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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