判例データベース
M社パート未払い賃金事件
- 事件の分類
- 賃金・昇格
- 事件名
- M社パート未払い賃金事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成16年(ワ)第17140号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2005年12月28日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部棄却(確定)
- 事件の概要
- 原告は、平成13年7月、被告との間で調理、接客、清掃、配送等の業務を内容とする3ヶ月間のパートタイマー雇用契約を締結した女性であり、同月13日から概ね週4、5日稼働し、本件契約は3ヶ月ごとに更新され、平成15年9月30日に終了した。
原告の賃金は、平成13年11月19日から平成14年3月30日まで、基本時給1080円、深夜時給1350円、同月31日から退職時まで、基本時給1120円、深夜時給1400円であったが、原告は、店長による原告の作業に対する評価は原告の作業能力の確認に限定されるべきであり、それ以上の評価についての裁量権はない筈であり、原告がそれぞれのランクで要求されるレベルに達したときは、ほぼ自動的に昇格・昇給が認められるべきであって、被告の裁量権は殆ど無視できるほどに小さいと主張し、原告は被告による経費を不当に抑制するという濫用的意図に基づく不法行為である不当な昇格・昇給の停止措置により損害を受けたとして、差額賃金11万8474円及び弁護士費用1万1847円及び所定休憩時間及び終業時刻以後にも実際に勤務していたとして、不足分の賃金相当額を合計して136万7635円を請求した。 - 主文
- 1 被告は、原告に対し、71万0805円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 昇格・昇給に関する権利濫用
被告においては、雇用したパート、アルバイト従業員についての会社の一員としての自覚と責任を醸成し、業務への精励を期待して、時給を能力給と資格給に分けて、一定の評価制度を設定していることからすると、単に仕事のスキルや担当業務のみではなく、個々の従業員の意欲・自覚などの総合評価の上に立った当該店舗の店長による評価対象者の把握を予定しているものと考えられる。それゆえ、店長の評価を得ないでも自動的に原告が昇格し、時給は昇給するという立論が前提を欠くものとして失当というべきである。
原告は、順を追って昇給し職位を上げてきており、被告における昇格・昇給の仕方の標準がどの程度であるかは明らかではないものの、被告においては、入客数をその時間帯での延べ労働時間数で割った値が休憩時間や人員配置の目安になっているようであるところ、原告の配属店では深夜勤務は原則2人体制でシフトリーダー格のアルバイト学生と仕事をしていたものであり、その後新人研修の者が同店に入ってきて原告が指導するなり、時間帯責任者として出勤簿の申告に関わるようになったとしても、同店の規模から深夜の時間帯勤務者に課された役割としてはある程度は許容の範囲として考えざるを得ないところであり、原告の時給が他の原告と同様のパートタイマーの地位にある職種の者が昇格・昇給していくのに原告が独り時給が不当に長期間据え置かれたなどの平等に反する取扱いを受けていたことの具体的な事情が窺われない以上、店長による評価を得ていないことからして致し方ないものと考えるのが相当である。また、経費を不当に抑制する意図などから被告において原告に対する関係で昇格・昇給について裁量権の濫用にわたる実態があったことを認定することはできない。したがって、被告の原告に対する昇格・昇給の評価に濫用にわたるところが認められない以上、原告主張にかかる差額賃金の支払い請求には理由がない。
2 未払い残業代 (略) - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例910号36頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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