判例データベース
H社雇用契約上の地位確認等請求事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- H社雇用契約上の地位確認等請求事件
- 事件番号
- 静岡地裁 − 昭和60年(ワ)第564号
- 当事者
- 原告 個人2名
被告 株式会社H - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1986年07月04日
- 判決決定区分
- 請求一部認容(原告一部勝訴)
- 事件の概要
- 原告Aは昭和46年、原告Bは昭和49年に、被告株式会社Hにパートとして雇用された。その際、雇用契約書を交わしたり、期間を定めたりはしてなかったが、その後昭和55年ころから、パート従業員の雇用期間を1年と明記する労働契約を締結するようになり、Aは2回更新し、Bは1回更新した。昭和58年4月、A、Bに対して、同年5月に期間満了し契約更新はしない旨の通告がなされた。これに対し、Aらは地位保全の仮処分を申請し、静岡地裁は認容した(昭和58年8月16日)。その後、両者間に和解が成立したため、右仮処分は事情変更を理由として取り消す判決が下された(昭和59年11月20日)。
しかし、就労再開後、A、Bは従前の衣装、包装の仕事でなく、草取りや門の開閉、ガラス拭き等の雑務に就労させられ、屈辱感を味わわされ、またその結果、腕や背中を痛め、通院加療し労災給付を受け、昭和59年7月初旬から欠勤を余儀なくされた。原告Aは昭和60年8月から、原告Bは昭和59年8月から就労が可能となり現職復帰を求めたが、被告はこれを認めなかった。
これに対し、Aらは雇用契約上の地位の確認及び賃金の支払い、不法行為による慰謝料100万円等を各自被告に対し求め、提訴した。 - 主文
- 各原告と被告との間にそれぞれ雇用契約関係が存在することを確認する。
被告は、原告Aに対し金63万1,720円及びこれに対する昭和61年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を、同Bに対し金160万7,840円及びこれに対する右同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被告は、昭和60年12月から昭和62年5月まで、毎月25日に、原告Aに対し金8万2,930円(ただし、昭和62年5月は金5万5,287円)を同Bに対し金8万1,740円(ただし、昭和62年5月は金5万4,493円)を支払え。
原告らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを5分し、その1を原告らの、その余を被告の負担とする。
この判決は、第二、三項に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 被告は適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を自白したものとみなす。原告らはその主張に係る被告の不法行為により、精神的苦痛を蒙ったということができ、これを慰藉する金額としては、原告らそれぞれにつき金30万円をもって相当とする。以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、雇用契約関係の存在確認と、原告ら各自につき、昭和60年11月までの賃金(原告Aについては、同年8月からの金33万1,720円、同藁科については昭和59年8月からの金130万7,850円)及び慰藉料金30万円並びにこれらに対する賃金支払日の後であり不法行為の日の後である昭和61年1月17日から各支払ずみまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払、昭和60年12月から昭和62年5月まで、毎月25日に、原告が金8万2,930円(ただし、同年5月は金5万5,287円)、同藁科が金8万1,740円(同右、金5万4,493円)の月額賃金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却する。
- 適用法規・条文
- 02:民法90条
- 収録文献(出典)
- 労働判例506号18頁、労働経済判例速報1311号13頁、労働法律旬報1203号76頁
- その他特記事項
- 控訴審(No.69)、上告審(No.70)参照。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
静岡地裁 − 昭和60年(ワ)第564号 | 請求一部認容(原告一部勝訴) | 1986年07月04日 |
東京高裁 − 昭和61年(ネ)第2116号 | 控訴棄却(控訴人敗訴) | 1987年03月25日 |
最高裁 − 昭和62年(オ)第871号 | 上告棄却(上告人敗訴) | 1987年10月16日 |