会長挨拶
本協会の前身である「婦人少年協会」は、1952年、「婦人の地位向上及び青少年の福祉の増進」を目的に、労働省婦人少年局の外郭機関として発足しました。「婦人少年協会」から「女性労働協会」に変わったのは1999年。1999年は、男女共同参画社会基本法が制定された年でした。
同法の制定を受け、女性労働協会の定款は、本協会の目的について、「あらゆる年代の女性に関する労働問題についての啓発、相談、調査、研究等の事業を行うことにより、社会における女性の地位向上及び女性の福祉の増進を図り、もって男女共同参画社会の形成に寄与する」と定めました。それにより、本協会は女性の「労働問題」に関する支援や調査・研究を行う団体へと変わりました。
その背景には、1990年代末の政策転換があります。性別役割分業を前提とした政策から、女性の就労を促進し、男女が対等に責任を担う男女共同参画社会の実現へと政策転換が図られたのです。
女性は長い間、家庭内で「主婦」や「母」の役割を担い、家庭の外では保育・教育・看護・介護などの「ケア労働」を担ってきました。こうした女性の役割や労働は、社会の再生産を担うエッセンシャル・ワークとして大変重要なものですが、他方で、そのことが男女の経済的・社会的格差をもたらしてきました。男女共同参画社会の実現が提唱される中、従来当然視されてきたそうした男女の役割や格差自体が、許容しえないジェンダー不平等として捉えられる時代になったのです。
しかしながら、その後も、「仕事と家庭の両立」は主に女性のための課題と見なされ、男性の課題としては位置づけられませんでした。その結果、共働き世帯は増加しましたが、増えたのは妻がパートタイムの世帯で、妻がフルタイムで働く世帯はほとんど増えていません。また、女性管理職の増加率はわずかで、男女の賃金格差もなかなか縮まりません。日本社会にはいまだ様々なジェンダー格差があり、女性が働き続け、持てる力を発揮するには様々な困難が存在しています。
本協会は、企業や団体、そして個々人のご協力の下、そうした女性を取り巻く困難や問題を把握・分析し、サポートすることを通して、女性が生き生きと働き続けられる社会の実現に貢献したいと考えています。今後とも、ご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

令和7年7月1日
一般財団法人女性労働協会 会長
広井 多鶴子