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京都(放送会社)派遣労働者解雇事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 京都(放送会社)派遣労働者解雇事件
- 事件番号
- 京都地裁 − 昭和51年(ヨ)第132号
- 当事者
- 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 1981年05月10日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下
- 事件の概要
- 申請人らは、放送番組の制作等を主たる業務とするT社との間に雇用契約を締結したが、被申請人会社(会社)とT社との間の請負契約に基づいて会社に派遣され(下請社員)、会社の業務に従事していた。会社は、昭和43年12月、T社との間に番組制作及び送出業務の請負契約を締結し、1年毎に契約を更新し、T社と雇用契約を締結した者が会社に継続的に派遣されてきており、申請人らはその一員であった。
T社は、下請社員に対して、直接賃金を支払い、各種保険に加入手続きをとって保険料を支払うとともに、団体交渉により賃上げ、一時金等労働条件について直接協定を締結していた上、健康診断も一時を除いて実施し、会社内に所長を任命し、下請社員への連絡事項の伝達、人事管理等を行っていた。しかし、昭和46年11月以降は、会社社員と下請社員は渾然一体として業務を行い、事実上会社の職制の指揮命令により業務が遂行されていた。
会社は下請社員を順次減らそうとのかねてからのT社との申し合わせと、職業安定所から右請負契約は職業安定法44条に触れるとして是正勧告を受けたことから、昭和50年12月8日、会社とT社は右請負契約を解除し、T社から申請人らに対し、同月11日付けでE事業所へ配転を命じる一方、会社からは申請人らに対し、同日以降会社内で就労しないよう幾度も申し入れた。
申請人らは、昭和49年11月に至り、会社に対し雇用関係あるものとして取り扱うこと等を求め団体交渉を申し入れたが拒否されたところ、昭和50年11月、地方労働委員会から団体交渉を命ずる救済命令が出されたことなどから、これにより団体交渉を求めると共に、前記T社の指示や会社の通告を拒否して引き続き会社において就労している。
申請人らは、その就労実態からみて、会社との間に使用従属関係が存在するとして、会社の従業員としての地位の確認と賃金の支払いを求めて仮処分の申請をした。 - 主文
- 1 申請人らが被申請人会社の従業員たる地位を有することを仮に定める。
2 被申請人会社は申請人らに対し、別表(略)認容額欄(一)記載の金員及び昭和51年5月25日以降毎月25日限り同欄(二)記載の金員を仮に支払え。
3 申請人らのその余の申請を却下する。
4 申請費用は被申請人会社の負担とする。 - 判決要旨
- T社の近畿事務所なるものは事業所たる実体を有せず、申請人らは会社の職制等の指揮監督のもとに労務を提供していたことが明らかで、申請人らと会社との間には使用従属関係が存在し、また申請人らの行う業務は会社の社員によっていつでも代替できる内容のものであり、請負代金の名目でT社に支払われているものも実は一定の仕事に対する報酬ではなく、申請人らの労務の提供と対価的牽連性を有し実質は賃金とみるべきものであるから、会社とT社との間の請負契約は請負契約ではなく、職業安定法44条の禁ずる労務供給契約に外ならないというべきであって、無効といわなければならない。
そして、これに加え、使用従属関係の存在と社員にのみ支給される祝金や社長賞までも申請人らが支給を受けていたこと及び名目が請負代金であるにせよ申請人らの労務の提供に対する報酬の支払いとみるべき実態が存することに鑑みれば、たとえ会社において請負契約なる外装を捨てる意思がなかったとしても、少なくとも右契約が外装に過ぎないとの認識はあったと認めるのが相当であり、そうだとすると、申請人らと会社との間には遅くとも前記団体交渉の申入れの頃までに申請人らの提供する労働に客観的に見合う金額を賃金とする黙示の雇用契約が成立していたものとみるのが相当である。
しかして、右のように申請人らと会社との間に雇用契約関係が存する以上、会社が請負契約を解除し申請人らの意思に反して同社内での就労を拒否することは申請人らに対する解雇の意思表示とみなければならない。しかるところ、右解雇に正当事由があるということはできないし、その他正当な解雇事由は見当たらないから、右解雇は権利の濫用であって無効と言わなければならない。 - 適用法規・条文
- 職業安定法44条
- 収録文献(出典)
- 労働判例252号16頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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