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J社雇止事件

事件の分類
雇止め
事件名
J社雇止事件
事件番号
大阪地裁 − 平成14年(ワ)第11356号
当事者
原告 個人1名
被告 株式会社
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2004年03月12日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 被告は、飲食業及び鉄道会社所有にかかる車両・機器の検査、修繕、整備、清掃等を目的とする株式会社であり、原告は平成11年10月4日被告に準社員として雇用された者である。本件労働契約で定められた労働条件は、パートタイマーであること、雇用期間は平成11年10月4日から同月31日まで、雇用期間中であっても業務量減による場合等で本件労働契約を解約することがあるというもの等であった。

 本件労働契約は、平成12年4月以降6ヶ月毎に更新され、更新の度に雇用契約書を交わしてきたところ、被告は平成14年2月26日、原告に対し雇止めの意思表示を行った。
 これに対し原告は、本件労働契約は更新を反復継続しており、被告では雇止めを行ったことがほとんどなく、原告以外の者は労働契約の更新が繰り返されていたこと、原告は準社員ではあるが、ボーナス、有給休暇も与えられており、正社員に極めて近いことから、原告の契約更新に対する期待は合理的なものであり、雇止めについて解雇の法理を類推適用すべきと主張した。その上で、原告は、経済事情の変動により剰員を生じるなど使用者においてやむを得ない特段の事情がない限り、期間満了を理由として雇止めをすることは信義則上許されないところ、被告には剰員を生じるなどやむを得ない特段の事情はないとして、労働契約上の権利を有する地位の確認と賃金の支払いを請求した。また原告は、被告による不当な雇止めにより精神的損害を受けたとして、慰謝料50万円、弁護士費用50万円を請求した。
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 雇用期間の定めがある労働契約は、雇用期間の満了により契約期間は終了する。もっとも、雇用期間の定めのある労働契約が反復更新され、期間の定めが形骸化して期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合は、使用者による労働契約の更新拒否には、解雇の場合と同様に客観的で合理的な理由が必要であると解すべきであるし、また期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも、雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は、更新拒否につき、客観的で合理的な理由が必要であると解すべきである。

 原告が担当していた業務は、被告の受注量によって業務量が日々変動し、業務自体は余り熟練を要するものでないことから、被告ではこの業務に対してはパート従業員によって対応しているところ、原告が被告に雇用されてから本件雇止めに至るまで、本件雇用契約は6回更新されたが、契約締結時及び更新の際に定められた期間1回は1ヶ月が2回、4ヶ月が1回、半年が4回と比較的短期であった上、更新ごとに雇用契約書を作成し、その契約内容も、時給と雇用期間を除いては内容に変更はなく、更に被告では少なくとも平成8年6月以降平成14年3月31日までの間に、本人の意思にかかわらず雇止めとなった従業員が28名いたとの事情を総合すると、被告において、パート従業員について雇用期間を定めて労働契約を締結していることにはそれなりの合理的な根拠があるし、また期間の定めが形骸化して本件労働契約が期間の定めがない契約と同様の状態になっていたということもできず、更には更新の実績からみて、原告に更新を期待し得るだけの合理的な理由はなかったといわざるを得ない。したがって、本件労働契約は、平成14年3月31日の経過をもって終了したというべきである。

 これに対し原告は、本件労働契約更新について合理的な期待があったと主張するが、本件労働契約更新の際には、その都度雇用契約書を作成して労働条件を確認し、同契約書に原告及び被告が共に署名ないし記名・押印している上、被告では原告と同様のパート従業員に対して雇止めをした例がそれなりの件数認められることからすると、雇用期間の定めが形骸化していたとか、あるいは本件労働契約が期間の定めのない労働契約と同様の状態になっていたということはできない。
 この他原告は、労働条件が正社員に極めて近いとして、原告の本件契約更新に対する期待は合理的なものである旨も主張するが、仮に原告の労働条件が正社員のそれと類似していたとしても、パート従業員の被告における位置付け、本件労働契約の内容及び更新の実体からすれば、正社員との労働条件の類似性が当然に雇用継続の合理性を根拠づける理由となるものではない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働経済判例速報1877号3頁
その他特記事項