判例データベース
F郵便局臨時雇雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- F郵便局臨時雇雇止事件
- 事件番号
- 福井地裁 − 昭和48年(モ)第121号、福井地裁 − 昭和48年(ヨ)第108号、福井地裁 − 昭和50年(ヨ)第4号
- 当事者
- その他申請人 個人1名
その他被申請人 国 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1976年03月04日
- 判決決定区分
- 原決定取消、却下(控訴)
- 事件の概要
- 申請人は、昭和46年11月5日、被申請人の郵政省北陸郵政局F郵便局(F局)に任期を1日とする臨時雇として採用され、集配等の職務に従事していたところ、昭和47年6月29日、F局から同年7月1日をもって予定雇用期間が満了することを通告され、同月2日以降、就労を拒否された。
これに対し申請人は、臨時雇の仕事は本務者と何ら変わらず、雇用期間も長期化し常勤化していたとし、かかる勤務の実態等からすれば申請人と被申請人との間には当初から期間の定めのない雇用契約が締結されていたから本件雇止めは解雇に当たるところ、本件解雇は思想信条を理由とする差別によるなど、何ら正当性がないから無効であるとして、地位保全及び賃金仮払いの仮処分を申請した。原決定はこれを認容したことから、被申請人が異議を申し立てたものである。 - 主文
- 1 (昭和48年(モ)121号事件)につき
(1)申請人と被申請人間の福井地方裁判所昭和47年(ヨ)第92号地位保全等仮処分申請事件につき、同裁判所が昭和48年3月12日になした仮処分決定を取消す。
(2)申請人の右仮処分申請を却下する。
2 (昭和48年(ヨ)第108号事件、同50年(ヨ)第4号事件)につき
本件仮処分申請を却下する。
3 訴訟費用は申請人の負担とする。
4 この判決は第1項(1)に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 国家公務員法、人事院規則、郵政省の任用規定等によれば、郵政省非常勤職員である臨時雇は任期を1日とするが予め定められた予定雇用期間2ヶ月以内においては任命権者が別段の意思表示をなさない限り任用が更新されるけれども、予定雇用期間満了時には再任用されない限り当然退職するという法規制を受けていることが明らかである。
現業国家公務員の基本的勤務関係である任免、分限等に関する限りは非現業国家公務員と同様、公的規制の下に置かれる公法関係といわざるを得ず、郵政現業国家公務員の勤務関係の法的性質もまた基本的には公法関係と考える外ない。即ち国公法2条4項は一般職に属するすべての職員に同法を適用する旨規定し、常勤職員たると条件付任用者、臨時的任用者たると、また同法附則13条に基づき人規の規定により任用される非常勤職員たるとを区別せず、国公法を適用するとしており、非常勤職員の身分関係即ち任免、分限、懲戒及び服務等についてはいずれも国公法及び人規の定めによることとされており、また郵政省設置法20条も常勤職員、非常勤職員を区別せず職員の任免等につき国公法によると規定していることからすれば、郵政現業国家公務員中非常勤の臨時雇についてもその基本的な勤務関係である任免、分限、懲戒等に関する限り、国公法、人規等の公法的規制の下に置かれる公法関係であるというべきである。
以上に説示した臨時雇に対する法規制、基本的勤務関係の公法的性格に鑑みると、臨時雇はその予定雇用期間満了後は再任用されない限り、臨時雇の身分を喪失し当然退職となると解するのが相当である。しかして、同臨時雇の基本的勤務関係が公法関係であることに鑑みると、申請人主張のように再任用拒否が解雇であるとの立場に立っても、右処分は免職という行政処分という外はなく、行訴法44条にいう行政庁の処分に当たる行為であり、被保全権利たる公務員の地位確認を求める本案訴訟が公法上の実質的当事者訴訟であるとしてもかかる行為を阻害する仮処分は右法条の趣旨に鑑み許されないものと云うべく、まして現業国家公務員である臨時雇の公務員たる地位は再任用されない限り予定雇用期間満了によって当然に終了すると解する以上、本件仮処分申請は行政庁に代わって再任用という行政処分を仮にすべきことを求めるものに外ならず、かかる仮処分ないし右仮処分を前提とする賃金仮払の仮処分は、行訴法44条の趣旨に鑑み許されないこと多言を要しない。したがって本件仮処分申請はいずれも違法として却下されるべきであり、原決定は取消されるべきものである。 - 適用法規・条文
- 国家公務員法2条、行政事件訴訟法44条
- 収録文献(出典)
- 判例時報822号99頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
福井地裁 − 昭和48年(モ)第121号・同(ヨ)第108号・、同50年(ヨ)第4号 | 原決定取消、却下(控訴) | 1976年03月04日 |
名古屋高裁 − 昭和51年(ネ)第49号 | 棄却 | 1979年03月16日 |