判例データベース
静岡県F自動車学校パートタイマー雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 静岡県F自動車学校パートタイマー雇止事件
- 事件番号
- 静岡地裁富士支部 − 昭和62年(ヨ)第484号(A事件)、静岡地裁富士支部 − 昭和63年(ヨ)第6号(B事件)
- 当事者
- その他債権者 個人2名 A、B
その他債務者 F自動車学校 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 1988年09月28日
- 判決決定区分
- 却下
- 事件の概要
- 債務者は、運転技術の修得免許に関する事業等を目的とする株式会社であり、債権者A(昭和11年11月生)は昭和58年2月16日、債務者富士校において雇用期間1年のパートタイマーとして雇用された女性であり、債権者B(昭和26年3月生)は、昭和58年11月から被告富士校で再びアルバイトを始め、昭和59年4月から引き続き期間を定めないでパートタイマーとして雇用された女性である。債務者においては、正社員は選考試験を経て採用され、身元保証人を2名立てることが必要とされ、嘱託も同様であるのに対し、パートタイマーは所定の選考試験に合格した者を採用すると定められているだけで、身元保証人は要求されていなかった。
債権者Aと債務者は、その後昭和60年2月16日から同年8月15日までとする雇用契約書を作成したほか、いずれも雇用期間満了の都度、3ヶ月単位で昭和62年11月15日まで雇用期間を更新した後、翌16日から同年12月15日まで労働期間を更新した。また債務者Bと債務者は、昭和60年4月1日から同年9月30日までとする雇用契約書を作成したほか、いずれも雇用期間満了の都度3ヶ月ごとに契約を更新し、昭和62年12月31日まで契約を更新した。ところが、債務者は、富士校が昭和59年度に赤字に陥り、昭和60年度には会社全体としても赤字に転落したこと、労使対立の激化の中で経営上の展望を開けなくなったこと等から、債権者らを昭和62年12月限りで雇止めした。これに対し債権者らは、従業員としての地位の保全と賃金の支払いを求めて、仮処分を申請した。
債権者Aが雇用された日以降、債権者らが雇止めを通告された日までの間には、債務者富士校に労働組合が結成され、債権者らがその結成と同時に組合に加入し、組合が活発な活動を行い、労使対立が生じたこと、昭和60年5月には組合が申立人となり、団交拒否等の不当労働行為の申立てを行い、労使対立が深刻になったこと、組合が賃上げ等を要求してストライキを敢行したこと、冨士校は昭和59年度に赤字に陥り、債務者全体としても昭和60年度には赤字に転落したりして、経営が悪化したことが認められる。 - 主文
- 本件仮処分申請を却下する。
申請費用は債権者の負担とする。 - 判決要旨
- 認定事実によっては、債権者らと債務者間の労働契約における雇用期間の定めが不当労働行為であるとか、又は公序良俗に反したものであるとかまでは認められない。また、債権者と債務者A間の労働契約は12回、債権者B間の労働契約は10回にわたり反覆更新されたものであるが、他方、右更新はいずれも期間満了の都度、新たな契約を締結する旨の合意によってなされたものであるから、右労働契約が雇用期間の定めのない契約に転化したり、あるいは実質的に雇用期間の定めのないものと同様になったものとまでは認めることができないが、債権者らは季節的な労務や臨時的な業務のために雇用されたものではなく、雇用関係の継続がある程度期待されていたものであるから、債権者らと債務者間の労働契約は雇用期間が満了したというだけで直ちに終了するものと解することはできず、債権者らに対する本件雇止めの効力については解雇に関する法理を類推して判断するのが相当である。
債権者らはパートタイマーとして比較的簡単な手続きで期間を定めて雇用されたものであるから、ある程度の雇用の継続が期待されたものであるとしても、その雇止めの効力を判断する基準については、終身雇用の期待のもとに期間を定めない労働契約を締結している正社員を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるものというべきところ、昭和60年度に赤字に転落し、その後も増々悪化していた債務者の事業状況、経営状況等に関する諸事情によれば、昭和62年12月当時の債務者には、就業規則が職員の解雇事由として定める「やむを得ない会社の都合によるとき」に該当する事由があったものであることが認められる。
また、本件雇止めがなされた当時、債権者らが組合員としてストライキに参加したが、当時の債務者は切迫した経営状態にあり、経営上の展望も開けない状態にあって、間接部門を削減し、F校の人件費を少しでも減少させるべくパートタイマーである債権者らを雇止めしたのはやむを得ない措置であって、その点に不合理な点はないことが認められ、これらの事情を総合して考えれば、債権者らに対する雇止めにつき、債務者に不当労働行為意思があったものと認めるに足りない。更にまた、債務者の経営悪化が債務者の故意行為であるとはいえず、債権者らの雇止めに先立ち4名の夜間アルバイト全員が使用を取りやめされ、債権者らは雇止めの取扱いを受けたものである。これに対し当時唯一の正社員でない従業員であった嘱託Yは雇止めされなかったが、Yは嘱託で、雇用期間の定めなく雇用され、渉外係の業務に従事し、人事考課を受けていたなど債権者らに比べてより債務者との結びつきが強く、企業の基幹に近い労働者であったものと認められるから、Yを雇止めせず、債権者らを雇止めしたことが不公平で信義則に反したり、権利の濫用に当たるものと認めることはできない。そうだとすれば、本件雇止めは有効であり、その通告後30日の経過により、債権者と債務者との労働契約は終了するに至ったものというべきである。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例528号61頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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