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N放送会社女子若年定年制事件

事件の分類
退職・定年制(男女間格差)
事件名
N放送会社女子若年定年制事件
事件番号
名古屋高裁 − 昭和48年(ネ)第227号
当事者
控訴人 N放送株式会社
被控訴人 個人2名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1974年09月30日
判決決定区分
控訴棄却(控訴人敗訴)
事件の概要
控訴人会社では、就業規則で定年を男子55歳女子30歳と定めており、30歳に達した被控訴人A,Bをそれぞれ退職したものとして取り扱ったものである。

原審では、Aの地位保全仮処分申請事件、2名の女性の地位確認等請求事件、いずれも労働者である原告の請求が認容又は一部認容され、原告らが勝訴した。
これに対し、会社が控訴したのが本件である。
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
判決要旨
労働条件についての差別取扱いについて

労働基準法3条、4条は罪刑法決定主義の原則から性別を理由とする賃金以外の労働条件について直接禁止の対象とはしていない。

しかし、憲法14条は国又は公共団体と私人との間の関係につき、それぞれ両性の本質的平等を実現するため、性別を理由とする合理性のない労働条件に関する差別を禁止することを志向しているもので、著しく不合理な性別による差別は民法90条により公序良俗違反として無効である。控訴人の主張はいずれも、本件定年制を合理的ならしめるものとは認められない。(即ち女子は一般的に短期勤続であり、また労働基準法の保護規定があり、男子より労働価値が低いこと。

人事の停滞防止と新陳代謝を図る必要があるが女子の業務は単純な定型的補助業務であって、年功賃金のため賃金のみ高くなること。他の企業でY会社と同一の定年制が存在すること。)
してみると、本件女子定年制は、女子従業員をそれが女子であることのみを理由として、55歳定年制を有する男子従業員に比し著しく差別するものというべく、社会的に許容し得る限界を超えた著しく、不合理な性別による差別であるから、右定年制を定めた控訴会社の就業規則の規定は民法90条により無効であるといわざるを得ない。本件女子定年制は無効であるから、被控訴人らは各満30歳に達した日の翌日以降においても依然として控訴会社の従業員としての地位を保有している。
適用法規・条文
02:民法90条
収録文献(出典)
労働関係民事裁判例集25巻6号461頁、
西村昭ほか労働法律旬報871号48頁
その他特記事項
No.26参照